美しい昔の楽譜

内藤コレクション

「写本 いとも優雅なる中世の小宇宙」

2024611日―825

国立西洋美術館

 

を観に行ってきました。

まだ印刷技術のなかった時代、中世ヨーロッパでは書物はすべて手作りでした。大体10世紀から15世紀くらいでしょうか。

政治的にも文化的にもキリスト教の影響が大きかった時代ですので、祈祷書など聖職者や信者向けの書物が、職人技で大変優雅な美の世界観を持って作成されました。

写真最初の2枚はネウマ譜(ネウマフ)という聖歌の楽譜です。

動物の皮に羽ペンで文字(ラテン語)や絵や音符が書かれています。赤や青や金色の装飾や飾り文字が楽譜を彩り、見ているだけで美しく幻想的な音楽が流れてきそうです。

よく見ると現代の楽譜の5線と違って4線ですね。今ほど使用される音程の幅が大きくなかったのでしょう。また小節線もありませんし、音符は四分音符とか2分音符とかではないので、どれくらいの長さなのかわかりません。音の長さや高さを正確に表すというよりは、それまで口伝えだった聖歌を、キリスト教の普及とともに目で見える形に記録された楽譜という感じでしょうか。ラテン語のアクセントやニュアンスに合わせながら、音符が密集しているところは少し早く、音符が離れているところはゆったりと、教会内にいる人たちが息を合わせて歌っている様子が想像できます。挿絵や周りに描かれた装飾が聖歌の内容や雰囲気を伝えているのだと思います。中世に建てられた教会や修道院や宮殿は、ロマネスク様式、ルネサンス様式、ゴシック様式などの建築美がその時代の特徴を反映していますが、そういった構造的、数学的な美しさも感じ取れます。

この1枚を作成するのにどれだけの時間と技と集中力とセンスが必要だったでしょう。当時の人々はとても濃密な、そして豊かな時間を過ごしていたんだろうなぁと思います。日本の雅な時代と年代が重なっているのも興味深いです。

ユーモアのある挿絵も沢山ありました。お茶目な職人さんがいたのでしょうね。